管制室の日常2

管制室は深夜は恐ろしく静かであった
"混沌の深淵"呼ばれる管制室であっても軍関係施設であることはかわりなく
30人シフト24時間体制は常であった
だが例外もたまには存在する
その日、管制室に居たのはただ一人だった
 
「やれやれ、ここは相変わらずだな」
「こうなることが判ってて押し付けたくせに良く言う」
60年以上の付き合いになる来客のセリフに苦笑しつつ応える
「…で、どうだ、使えそうか?」
「とりあえず二人は役に立たない、大人しく地方の基地にでも回したほうがいい」
「ほう?三人とも適正審査では優秀な成績だったと報告があるが?それこそ雫石中尉よりもよほど、な」
「…だが天使兵どもとの戦いでは役に立たない」
新しく配属された三人の管制官、それも成績優秀な三人のうち二人までを役に立たないと評した、そして居ないほうがマシだと断を下した
「たしかにここはね規則は緩いさ」
実際のところ緩いどころの騒ぎではない。私物は持ち込み放題、飲酒喫煙OK(とはいえ飲酒しているのはコレットくらいだが)、軍制服の着用の義務は無く、階級の上下すら厳守する必要は無い
「だけれども戦闘が始まったらちゃんと気持ちの切り替えをしてもらわなくちゃ困るんだよ、たとえ能力があっても簡単に”混沌"に呑まれるようなバカは要らないさ」
「さて、残った一人ローゼンハイム曹長か。彼女は君の審査に受かったのかね?」
「さてね、まだ"混沌"には呑まれちゃいないが……どうなることやらね」
そう言うと、見た目の歳相応の悪戯っ子っぽい笑みを浮かべる
「さて、私はそろそろ失礼するよ……だが、最期に一言だけ言わせてもらうよ」
「なんだい?」
「少しは控えたらどうかね?」
指を指した床には缶ビールの空き缶が7を数えていた
「ハハハ、心配ないさ血が濃いと酔わないんだ」
「私は酔うがな」
「私はアルコールを摂取しないと天使化してしまうんだよ」
「そうか、ならば私が責任を持って処理してやろう」
「君は酷いヤツだな」
「君ほどじゃないさ」