電波3

私の数少ない友人を数多くの者は"自堕落で無気力"こう評していた
たしかにこちらに私が連れてきて以来の姿しか知らない者であればそう評しても仕方のないことである
だが彼女の本来のベクトルは"冷酷な徹底主義者"少なくともかつての彼女はソレだった
そして今週に入ってから彼女はそういうかつての姿を取り戻しつつあった
止まっていた時計が再び動き出したかの様に
 
 
 
「やっぱり君が一番最初に来ると判っていたよ」
その背の羽根にその運命を絡め取られているにも関わらず変わらぬ口調で彼女は私を迎えた絡め取られた運命の果ては極僅かな奇跡の他には死しかありえない
そして…
「私には彼らのように奇跡を起こす器じゃないらしい」
寂しげに、だが悔いの色も無く彼女は笑う
「それに君の手で逝けるならば存外悪いものではないし、な」
これから待ち受ける運命を考えれば不自然すぎるほど自然な笑顔を私に向ける
「さぁ殺してくれ姉さん、皆のために……そして私のために」
 
 
コレットエスピノーザ少佐、合衆国強襲作戦の前日に死亡
だが事前の根回しの甲斐あってか管制室の働きに混乱は無かった
史書には記される