[エンゼルギア}電波4/SIDE:A

柄にも無くゼブラは緊張を隠せずにいた
少佐の身でありながら瑞穂基地の約半分の人員を指揮することになった、たしかにそれも原因の一つであろうがそこまで大きな要因ではない
失敗の許されないミッションである、そういう思いが強く彼を緊張に誘っていた
無論失敗の許されないミッションなど今までいやというほどこなしてきた
けれども今回のそれは意味合いが大きく違っていた
失敗したところで命を失うということはないだろう、だが尊厳、誇り、思想といった命以外の大切なモノ全て失うことは必定であり、命を失うよりなお辛いことである
「…雫石中尉、各斥候部隊の状況は?」
基地の半数を指揮しているとはいえそのバランスは大きく偏っておりこのミッションに参加している管制官はシズクのみであった
ついでに言えば、完機はまったくの不在で乗り気でなかったシズクを参加させるためにゼブラは秘蔵の完機ファイルを手放すはめになった
「んー、若干ニィート一矢組が先行しすぎってとこかな……っ!希凪神楽組の反応が消えただって!?」
「……問題無い彼らはあくまでも陽動だからね、だがこれで我々の存在があちら側にばれちゃっただろうねー。こうなったら僕らも出撃しようか」
瑞穂山の中腹に構えられた陣所はちょうど目標である瑞穂の湯が見下ろせる位置にある
瑞穂の湯を視界に捉えた時、ゼブラには二人の若いギアドライバーの悲鳴が聞こえたような気がした